JSTC

概要

「理論化学会」は、1997年に発足しこれまで23年間活動を続けてきた「理論化学研究会」を学会として発展させた形で、令和元年6月1日に設立されました。50年-100年先の学問としての理論化学の将来を考え、分野の次の展開を主導する機能をもたせることを基本方針とし、様々な活動を通して、周辺分野に対する理論化学分野のプレゼンスを高めることを目指します。「理論化学討論会」についてはさらなる充実を図り、新たな顕彰制度も導入する予定です。情報発信の手段としては、ホームページやメーリングリストに加え、理論化学会誌「フロンティア」を季刊(年4回発刊)いたします。その他、産学連携、啓発事業、学協会連携、国際連携、広報活動など、様々な活動に取り組んで参ります。

理論化学会:会長ご挨拶

このたび、第2代の理論化学会会長に選出されました東北大学の森田明弘です。

本会は理論化学の発展を目指して、先代の中井浩巳会長を中心として設立された新しい学会です。今期の副会長には、江原正博(分子研)、重田育照(筑波大)、立川仁典(横浜市大)、長谷川淳也(北大)の各氏が就任し、執行部を構成して学会の運営に当たります。今後、理論化学分野の中核を担う学会として、その発展を軌道に乗せていくことができるように努めて参る所存です。

理論化学という学問分野は、実験化学に対応するもので、その研究対象は化学全体にわたります。我が国にも福井謙一先生のフロンティア電子論による日本初のノーベル化学賞に代表されるように輝かしい伝統があります。量子化学だけでなく、分子シミュレーションや情報化学も取り込んで広く理論化学のコニュニティーを形成してきました。近年では計算機の目覚ましい進歩によって実際の化学現象を解明・予想できる実力を備えるようになり、応用面での期待が急激に高まっています。近年の進歩は、産業応用の面でも実用的な手法として広がることを実証できる段階に来たと考えています。

理論化学やそれに基づく計算化学の研究は、これまでにも化学のさまざまなコミュニティーのなかで利用されてきており、今後ますます広がっていくことは間違いありません。理論化学の応用は、計算機とパッケージプログラムを使えば誰でも比較的簡単に結果が出せる側面がありますが、その真価を発揮させるためには研究者の十分な見識と技量を必要とすることはいうまでもありません。応用面の急速な広がりは理論化学の将来にとって明るい見通しですが、その一方で、化学のなかで有用な道具にとどまらない位置づけを確立していく必要があると考えております。

理論化学を進歩させる基礎的な理論や方法論の開発から、先端的な応用手法やその有用性の実証まで本学会がサポートする領域が広がっています。とくに、理論化学自体の発展を担う中核的な研究者が先端的な研究と価値観をぶつけ合って共有できる組織の存在は理論化学の発展にとって不可欠であり、本学会の意義の拠り所と考えております。その確立に向けて皆様のご理解とお力添えをいただければ幸いです。

2021年10月1日

東北大学理学研究科化学専攻
森田 明弘

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